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カスタードアップル図鑑|バンレイシの味・旬・栄養と呼び名

カスタードアップル図鑑|バンレイシの味・旬・栄養と呼び名

緑色の皮にうろこ状の区画が並び、熟すと白い果肉が甘くやわらかくなるカスタードアップル。ベトナムでは na や mãng cầu ta と呼ばれ、市場やスーパーで親しまれています。

「カスタードアップル」は地域によって異なる果物を指す一般名です。この記事では、ベトナムでよく見かけるバンレイシ(Annona squamosa)を中心に、シュガーアップルや釈迦頭などの呼び名、近縁種との違い、味・旬・栄養、生態と品種を整理します。

「カスタードアップル」は学名ではなく、地域によって指す果物が変わる一般名です。
「カスタードアップル」は学名ではなく、地域によって指す果物が変わる一般名です。
目次

カスタードアップルとは?基本データ

項目内容
この記事で扱う果物バンレイシ(シュガーアップル)
学名Annona squamosa L.
分類バンレイシ科バンレイシ属の低木または小高木
英語名sugar apple、sweetsop、地域によっては custard apple
日本語名バンレイシ(蕃茘枝)
台湾での呼び名番荔枝、釋迦(釈迦)
ベトナムでの呼び名北部:na/南部:mãng cầu ta
自生域メキシコからコロンビアにかけての熱帯アメリカ
ベトナムでの主な収穫期地域差があるが、おおむね6〜9月。ランソン省チーランでは8月ごろが主な収穫期
味と食感甘みが強く、熟すと果肉がやわらかくなる。品種や熟度によって粒感がある
主な栄養炭水化物、食物繊維、ビタミンCなど

自生域はキュー王立植物園の Plants of the World Online に従いました。カリブ海やアジアにも広く分布していますが、これらの多くは導入地域として扱われています。

この記事では、ベトナムで na、mãng cầu ta と呼ばれるバンレイシを中心に扱います。
この記事では、ベトナムで na、mãng cầu ta と呼ばれるバンレイシを中心に扱います。

「カスタードアップル」は1種だけの正式名ではない

「カスタードアップル」は植物学上の学名ではなく、英語の一般名です。資料や地域によって、次のような異なる果物を指します。

主な呼び名学名特徴
シュガーアップル/バンレイシAnnona squamosa表面の区画が目立ち、熟すと区画が離れやすい
チェリモヤAnnona cherimola果皮の模様は品種差があり、果肉はなめらか
アテモヤAnnona cherimola × A. squamosaチェリモヤとバンレイシの交雑由来
サワーソップ/トゲバンレイシAnnona muricata果実が大きく、やわらかい突起があり、酸味がある
カスタードアップル/ギュウシンリAnnona reticulata表面に網目状の模様が出ることがある

たとえば、フロリダ大学は A. squamosa の一般名として「custard apple」を挙げる一方、近縁種 A. reticulata も「custard apple」と記載しています。オーストラリアではアテモヤを総称的に「custard apple」と呼ぶ例もあります。

したがって、「本来のカスタードアップルだけが A. reticulata で、それ以外は誤用」と言い切るのは適切ではありません。買うときや調べるときは、外見、現地名、可能なら学名を確認するのが確実です。この記事では以降、ベトナムで一般的な A. squamosa を「カスタードアップル(バンレイシ)」と表記します。

外見には品種差や個体差があるため、呼び名や学名も合わせて確認します。
外見には品種差や個体差があるため、呼び名や学名も合わせて確認します。

バンレイシの果実は、1つの花からできる集合果

バンレイシの果実は、1つの花にある多数の雌しべ(心皮)が成長してまとまった集合果です。丸い突起のように見える区画は、それぞれの心皮に由来します。

一方、パイナップルは多数の花に由来する果実がまとまった複合果(多花果)です。見た目はどちらも小さな区画の集まりですが、でき方は同じではありません。

バンレイシは1つの花からできる集合果、パイナップルは多数の花からできる複合果です。
バンレイシは1つの花からできる集合果、パイナップルは多数の花からできる複合果です。

花は雌性期から雄性期へ変わり、甲虫が受粉を助ける

バンレイシの花には雌しべと雄しべがありますが、同時には機能しません。先に柱頭が花粉を受け取れる雌性期になり、その後に花粉を放出する雄性期へ移ります。この性質は雌性先熟と呼ばれます。

フロリダ大学の栽培資料でも、先に雌性期が現れ、その後に雄性期へ移る流れが説明されています。移行の時刻は気候や栽培条件によって変わります。

自然界ではケシキスイ科などの小型甲虫が、雄性期の花から雌性期の花へ花粉を運びます。自然着果が不安定な栽培地では、着果率や果形を整えるため人工授粉も行われます。

小型甲虫が受粉を助け、栽培条件によっては人工授粉も行われます。
小型甲虫が受粉を助け、栽培条件によっては人工授粉も行われます。
開花時刻は条件で変わりますが、雌性期が先に来る順序が重要です。
開花時刻は条件で変わりますが、雌性期が先に来る順序が重要です。

カスタードアップルの追熟|成熟した実を室温で待つ

収穫適期に達した果実は、室温に置くとやわらかくなります。フロリダ大学は、果皮の突起の間が広がり、緑色が黄緑色に変わることなどを成熟の目安として挙げています。

ただし、十分に成熟する前に収穫した実は、硬いまま褐変して傷み、うまく熟さないことがあります。「硬ければ何でも追熟する」とは限りません。熟した果実は日持ちしにくく、冷蔵しても目安は2〜4日です。

収穫適期の実は室温でやわらかくなりますが、未熟すぎる実は正常に熟さないことがあります。
収穫適期の実は室温でやわらかくなりますが、未熟すぎる実は正常に熟さないことがあります。

黒い種は食べず、果肉から取り除く

種にはアセトゲニン類などの生理活性成分が含まれています。種は食用ではないため、かみ砕いたり、すりつぶして飲んだりせず、果肉から取り除いてください。種の抽出物が伝統的にシラミ駆除などに使われた例もありますが、家庭で試すべき用途ではありません。

果肉は通常の食品として食べられていますが、種や葉、濃縮抽出物を同じように扱うことはできません。食べる際は種を取り除き、種や葉を家庭の民間療法に使わないでください。

種はかみ砕かず、種・葉・濃縮抽出物と通常の果肉摂取を分けて考えます。
種はかみ砕かず、種・葉・濃縮抽出物と通常の果肉摂取を分けて考えます。

バンレイシの栄養成分

フィリピン科学技術省の食品成分表では、シュガーアップルの可食部100g当たりの主な成分は次のとおりです。

成分可食部100g当たり
エネルギー104kcal
炭水化物23.7g
食物繊維4.3g
ビタミンC40mg

数値は品種、産地、熟度、分析方法によって変わります。皮と種を除いた可食部100gの値であり、丸ごとの実100gの値ではありません。

栄養値は品種、産地、熟度、分析方法によって変わります。
栄養値は品種、産地、熟度、分析方法によって変わります。

ベトナムの na dai と na bở

ベトナム北部では、バンレイシを食感などから na dai と na bở に分けることがあります。

  • na dai:果肉に弾力があり、比較的日持ちしやすいタイプ
  • na bở:熟すと果肉がほろりと崩れやすいタイプ

この分け方は植物学上の別種ではなく、栽培品種や果実特性による呼び分けです。近年は na Thái など別の系統も流通しているため、「ベトナムには2品種だけ」とは言い切れません。

na dai と na bở は、植物学上の別種ではなく果実特性による呼び分けです。
na dai と na bở は、植物学上の別種ではなく果実特性による呼び分けです。

名産地「Na Chi Lăng」

ベトナム北部ランソン省チーランは、Na Chi Lăng の産地として知られています。ベトナム商工省は、薄い果皮、厚い果肉、少なめの種、甘みなどを特徴として紹介しています。主な収穫期は8月ごろで、OCOP認証を受けた商品もあります。

ベトナム産の生果実は日本へ持ち込めない

植物防疫所の公表資料では、ベトナム産バンレイシ生果実は輸入禁止品です。旅行者が手荷物として持ち込むこともできません。

検査証明書を用意すれば持ち込める品目ではありません。植物防疫所は、ベトナム産バンレイシの生果実を手荷物として持ち込んだ違反事例も公表しています。条件は変わる可能性があるため、渡航前に植物防疫所の最新情報を確認してください(2026年10月9日確認)。

ベトナム産バンレイシの生果実は日本へ持ち込めません。渡航前に最新条件を確認してください。
ベトナム産バンレイシの生果実は日本へ持ち込めません。渡航前に最新条件を確認してください。

まとめ

  • 「カスタードアップル」は地域により複数のバンレイシ属植物を指す一般名
  • ベトナムの na、mãng cầu ta は主にバンレイシ(Annona squamosa)
  • 果実は1つの花の多数の心皮からできる集合果で、パイナップルの複合果とは成り立ちが異なる
  • 花は雌性期から雄性期へ移り、小型甲虫が受粉を助ける
  • 収穫適期の実は室温でやわらかくなるが、未熟すぎる実は正常に熟さないことがある
  • 種は食べず、果肉から取り除く
  • ベトナム産の生果実は日本へ持ち込めない

食べ方や選び方は、姉妹記事のベトナムのカスタードアップルの食べ方、起源や伝来・ベトナム文化はカスタードアップルの歴史と物語で詳しく紹介しています。

名前だけで種類を決めず、種は除き、ベトナム産の生果実は日本へ持ち込まないことが要点です。
名前だけで種類を決めず、種は除き、ベトナム産の生果実は日本へ持ち込まないことが要点です。

カスタードアップルの味・旬・呼び名についてよくある質問

カスタードアップルとバンレイシは同じ果物ですか?

地域や資料によって呼び方が異なります。ベトナムで na、mãng cầu ta と呼ばれる果物は主にバンレイシですが、「custard apple」は別種やアテモヤを指す場合もあります。

カスタードアップルはどんな味ですか?

バンレイシは甘みが強く、熟すと果肉がやわらかくなります。品種や熟度によって粒感や弾力が異なります。

カスタードアップルの旬はいつですか?

ベトナムでは地域差がありますが、おおむね6〜9月が目安です。ランソン省チーランでは8月ごろが主な収穫期です。

ベトナムから日本へ持ち帰れますか?

ベトナム産バンレイシの生果実は輸入禁止品です。旅行者の手荷物でも持ち込めません。

参考資料

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この記事を書いた人

ベトナム・ハノイ在住。現地の市場やスーパーで実際に果物を購入し、味・旬・選び方・食べ方を紹介しています。日本ではあまり知られていない南国フルーツの魅力を、現地での体験をもとに分かりやすくお伝えします。

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