カキ(柿)は、甘柿と渋柿で食べ方が異なる果物です。 秋に葉を落とす落葉樹で、学名には日本語の「kaki」が使われています。カキには、かたいうちから食べられる甘柿と、渋を抜いてから食べる渋柿があります。違いを生むのは、果実に含まれる「水に溶けるタンニン」です。
この図鑑では、カキの生態、甘柿と渋柿の違い、渋抜きの仕組み、100gあたりの栄養を紹介します。ベトナム語では「quả hồng」。カキはベトナムでも北部やダラットで栽培されています。栽培に適した条件は品種や地域によって異なります。北部に伝わる「水に浸けて渋を抜く」食べ方や、日本の技術を取り入れたダラットの干し柿もまとめました。
カキ三部作: カキの歴史と物語を読む / 選び方・食べ方・保存を調べる
カキとは?原産地・学名・ベトナム語名
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日本語名 | カキ、柿 |
| 英語名 | Persimmon(Japanese persimmon、Kakiとも) |
| ベトナム語名 | quả hồng(クアー ホン) |
| 分類 | カキノキ科カキノキ属 |
| 学名 | Diospyros kaki |
| 原産地・自然分布 | 中国原産と紹介されることが多い。Kewはベトナムなども自然分布域に含める |
| 植物の姿 | 秋に葉を落とす落葉樹 |
| 花の特徴 | 雌花のみをつける品種や、雄花・雌花をつける品種がある |
| 味の違い | 甘柿と渋柿 |
| 注目したい成分 | ビタミンC、β-カロテン、食物繊維、渋のもとになるタンニン |
| ベトナムの主な産地例 | ランソン省バオラム(種なし柿)、フート省ハックチ、ラムドン省ダラット(干し柿) |
原産地は中国とする園芸資料がある一方、Kewの植物データベースはアッサムから中国・ベトナム・台湾にかけてを自然分布域としています。「栽培の歴史」と「自然分布」は区別して読む必要があります。
学名・生態はCalifornia Rare Fruit Growersのカキ資料、成分は後掲の文部科学省資料に基づきます。
カキはどんな植物?|木・花・果実の特徴
秋に葉を落とす落葉樹
カキは、高さ7mほどになる落葉樹です。秋に実が色づき、冬には葉を落とします。中国では長く栽培されてきました。品種は2,000を超えるとされ、朝鮮半島や日本に伝わった後も、それぞれの土地で新しい品種が生まれています。出典:California Rare Fruit Growers(2026年9月28日確認)。
雄花と雌花、種なしで実る品種も
カキの花のつき方は品種によって異なり、雌花のみをつけるものや、雄花と雌花をつけるものがあります。
カキには、受粉しなくても実をつける品種が多くあります。 これを「単為結果(たんいけっか)」といいます。受粉せずにできた実には、通常、種が入りません。同じ資料は、実の性質に影響するのは受粉そのものより「種があるかどうか」だと説明しています。出典:California Rare Fruit Growers(2026年9月28日確認)。
学名に日本語「kaki」が使われている
カキの学名は Diospyros kaki です。後半の「kaki」は、日本語の「かき」から取られています。欧米の一部では、英語のpersimmonと並んで「kaki」という呼び名も使われます。中国で長く栽培されてきたカキですが、学名には日本との結びつきが残っているのです。
カキの種類と味|甘柿と渋柿の違い
カキの種類を知る入り口は、「甘柿か、渋柿か」です。見た目の色や形だけでは、どちらか分からないこともあります。
| タイプ | 品種の例 | 食べ方の目安 |
|---|---|---|
| 甘柿 | 富有(ふゆう)、次郎 | 食べ頃なら、かたい状態でも食べられる |
| 渋柿 | 平核無(ひらたねなし)、西条、蜂屋 | 渋を抜く、やわらかく熟させる、干し柿にするなどしてから食べる |
品種の分類はCalifornia Rare Fruit Growersと島根県のカキ栽培指針に基づきます(2026年9月28日確認)。
種類と食べ頃は分けて確認: 富有・次郎などは食べ頃ならかたくても食べられます。渋柿でも渋抜き済みなら食べられます。色や形だけで判断せず、品種と処理の有無を確かめましょう。
甘柿|かたいうちから食べられる
甘柿は、実が熟すと渋が自然に消えるタイプです。代表的な富有や次郎は、食べ頃になればかたい状態でも食べられます。ただし、甘柿には種の入り方によって渋の残り方が変わるタイプもあり、すべてを同じようには扱えません。
渋柿|渋を抜いてから食べる
渋柿は、果実が色づいても、かたい状態では渋が残るタイプです。そのまま食べると、口の中がきゅっと収れんするような強い渋みを感じます。
島根県の栽培指針によると、渋柿の「西条」は、やわらかく熟した「熟柿(じゅくし)」にならない限り渋が消えません。そのため、出荷前に渋抜きをします。ドライアイスや炭酸ガス、アルコールを使う方法のほか、38〜40℃のお湯に15時間ほど浸ける「湯抜き」もあります。ただし湯抜きは、時間が短い反面、品質が落ちやすいとされています。出典:島根県「カキ栽培指針(1)脱渋」(2026年9月28日確認)。
渋の正体は「水に溶けるタンニン」
渋みのもとは、カキタンニンという成分です。水に溶ける状態のタンニンは、舌で渋く感じます。 渋抜きとは、このタンニンを水に溶けない形に変える作業です。不溶化したタンニンは、口の中で渋みとして感じにくくなります。
日本植物生理学会の解説では、この変化の鍵になるのがアセトアルデヒドという物質です。アルコールを使うと、アルコールが変化してアセトアルデヒドができます。炭酸ガスやドライアイスを使うと、実が酸素不足になり、実の中でアセトアルデヒドがたまります。干し柿が甘くなるのも同じ仕組みです。出典:日本植物生理学会「植物Q&A 柿の渋抜きについて」(2026年9月28日確認)。
つまり渋抜きは、渋を「取り除く」のではなく、渋みとして感じない形に「変える」作業です。
渋抜きの流れ: 可溶性タンニンが渋みの原因 → 果実内で生じたアセトアルデヒドなどの作用で不溶化 → 渋みを感じにくくなる。渋抜きは、タンニンを果実の外へ取り除く作業ではありません。
カキの栄養とカロリー|甘柿・渋抜き柿・干し柿を100gで比較
文部科学省の食品成分データベースでは、甘柿、渋抜きした柿、干し柿を分けて掲載しています。皮や種などを除いた、食べる部分100gあたりで比較します。
| 成分(可食部100gあたり) | 甘がき・生 | 渋抜きがき・生 | 干しがき |
|---|---|---|---|
| エネルギー | 63kcal | 59kcal | 274kcal |
| 水分 | 83.1g | 82.2g | 24.0g |
| 炭水化物 | 15.9g | 16.9g | 71.3g |
| 食物繊維 | 1.6g | 2.8g | 14.0g |
| カリウム | 170mg | 200mg | 670mg |
| β-カロテン当量 | 420μg | 300μg | 1,400μg |
| ビタミンC | 70mg | 55mg | 2mg |
出典:文部科学省「甘がき・生」、同「渋抜きがき・生」、同「干しがき」。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、2026年10月15日確認。
生の甘柿のビタミンCは100gあたり70mgです。干し柿は水分が少なく、同じ100gで比べるとエネルギーや食物繊維が多くなっています。
ただし、この表は別々の食品区分の比較であり、同じ柿を乾燥させる前後の測定値ではありません。 品種や加工条件も異なるため、成分の差をすべて水分の減少だけで説明することはできません。β-カロテン当量は、β-カロテン単独の量とは異なる指標です。1回に食べる量も考えて比較しましょう。
数値は1個あたりではなく、可食部100gあたりです。日本の食品成分表の値は、ベトナムで売られている個々の商品と一致するとは限りません。
栄養比較の読み方: 420・300・1,400μgはβ-カロテン「当量」です。β-カロテン単独の量は、甘がき160μg、渋抜きがき100μg、干しがき370μg(可食部100gあたり)です。
カキの栽培条件|温帯の果樹がベトナムでも育つ理由
カキは落葉性の果樹ですが、冬に必要な低温の量は比較的少ないと紹介されています。California Rare Fruit Growersは低温要求量を100時間未満としています。ただし、この数値をすべての品種・産地に共通する基準として使うことはできません。出典:California Rare Fruit Growers
同資料は、早春の暖かさで芽が動いた後、霜の被害を受ける場合があるとも説明しています。ベトナムでも北部やダラットに栽培例がありますが、適地は低温だけでなく、夏の暑さ、降水、品種などによって変わります。
産地を読む手がかり: 北部ではランソン省のバオラムやフート省のハックチ、高原ではラムドン省のダラットに柿の栽培・加工の例があります。低温要求量の目安だけで栽培適地を判断することはできません。
カキの旬と流通時期|日本とベトナム
日本のカキは秋の果物です。農林水産省の統計では、2024年(令和6年)産の収穫量は16万7,300トンで、収穫量の多い県は和歌山県、奈良県、福岡県の順でした。出典:農林水産省「近畿における令和6年産かき収穫量等の概要」(2025年4月15日公表、概数値。2026年10月3日確認)。
ベトナムでも、国内の産地では秋が中心です。
| 産地・商品 | 時期の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| ランソン省バオラムの種なし柿 | 中秋節(旧暦8月15日)のころ | ベトナム商工省(2022年) |
| フート省ハックチの柿 | 旧暦8〜9月に収穫し、渋を抜く | Vietnamnet(2019年) |
| ダラットの干し柿 | 9月からテト(旧正月)前まで吊るして仕上げる | Công Thương紙(2024年) |
旧暦の月は、年によって新暦の月とずれます。また、輸入の柿も売られているため、店頭で見かける時期はここに挙げた時期に限りません。購入するときは、値札や包装の産地表示で確かめるのが確実です。
ベトナムのカキ|北部の種なし柿とダラットの干し柿
ベトナム語名はquả hồng
ベトナム語でカキは「quả hồng(クアー ホン)」です。「hồng」は、バラ(hoa hồng)やピンク色を指すときにも使われる言葉なので、果物売り場では「quả hồng」の形で見ると分かりやすくなります。
水に浸けて渋を抜く、北部の伝統
ベトナム北部には、渋のある柿を水に何日も浸けて渋を抜く食べ方が伝わっています。
ランソン省バオラムの種なし柿(hồng không hạt Bảo Lâm)は、2012年11月14日に地理的表示の登録を受けた産品です。ベトナム知的財産庁は決定第2838/QĐ-SHTT号、登録第00032号として紹介しています。出典:ベトナム知的財産庁。歯ざわりのよい種なし柿として知られます。
VnExpressの記事によると、皮が黄色く色づいたころに収穫し、たらいや陶器のかめで水に沈めます。毎日水を替えて4日4晩置いてから引き上げる方法が紹介されています。水替えを怠ると渋が残るとされ、流れの速い沢に袋ごと沈める方法も紹介されています。出典:VnExpress(2015年9月19日掲載、2026年9月28日確認)。
フート省ハックチの柿(hồng Hạc)も、同じように水に浸けて渋を抜く柿です。昔は王への献上品だったと語り継がれる古い品種で、Vietnamnetは2019年時点で省内に残る樹齢25年以上の木を249本と伝えています。収穫が旧暦8月なら2日3晩、9月なら3日3晩浸けるという、時期で日数を変える細かな決まりもあります。出典:Vietnamnet(2019年10月13日掲載、2026年9月28日確認)。
ここで紹介した浸水法は、各産地の加工文化の紹介です。家庭で再現する手順としては扱わず、購入時に渋抜き済みかを確認しましょう。
ダラットの干し柿は日本の技術から
中部高原のダラット(ラムドン省)では、柿を吊るして乾かす干し柿「hồng treo gió(ホン チェオ ゾー:風に吊るす柿)」が特産品として知られています。
Công Thương紙によると、2012年から日本の干し柿生産者とJICA(国際協力機構)の専門家が、炭やまきを使わず日光と風だけで仕上げる方法を、100戸以上の農家に指導しました。吊るす時期は9月からテト前までで、同記事は価格を1kgあたり25万〜40万ドンと伝えています。出典:Công Thương紙(2024年10月17日掲載、2026年9月28日確認)。価格は記事掲載時の目安で、商品や店によって変わります。
北部では水に浸け、ダラットでは日本式に干す。同じベトナムの中で、渋との付き合い方が土地ごとに違っているのです。
品種・産地・加工は別々に見る
カキを知るときは、「甘柿か渋柿か(種類)」「どこで育ったか(産地)」「どう食べられる状態にしたか(加工)」を分けて見るのがポイントです。
たとえば、渋柿でも渋抜きや干し柿にすれば甘く食べられます。反対に、色や形だけで甘柿か渋柿か、どこの産地かを判断することはできません。産地は包装や値札の表示で確かめ、分からないときは販売店に尋ねましょう。
なお、この記事で紹介した産地は代表的な例です。ベトナム全体の生産量や、店頭に並ぶ柿の内訳を示すものではありません。
まとめ|カキを知る5つのポイント
- カキは東アジアで長く栽培されてきた落葉樹。学名 Diospyros kaki の「kaki」は日本語に由来します。
- 甘柿と渋柿の違いには、可溶性タンニンの変化が関わります。種の有無によって渋の残り方が変わる品種もあります。
- 渋抜きは、タンニンを取り除くのではなく、渋く感じない形に変える作業です。
- 必要な低温の量は比較的少ないとされ、ベトナムでも北部やダラットで栽培されています。
- ベトナム北部には水に浸けて渋を抜く伝統があり、ダラットでは日本の技術で干し柿が作られています。
秋にベトナムの市場で「quả hồng」を見かけたら、甘柿か渋柿か、どこで採れたものかに注目してみてください。
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参考資料
- California Rare Fruit Growers「Persimmon」:学名、原産地、花の特徴、単為結果、甘柿型・渋柿型の品種、低温要求量、耐寒性。
- 日本植物生理学会「植物Q&A 柿の渋抜きについて」:渋味の原因と渋抜きの仕組み。
- 島根県「カキ栽培指針(1)脱渋」:甘柿と渋柿の違い、渋抜きの方法。
- 文部科学省 食品成分データベース「かき/甘がき/生」
- 文部科学省 食品成分データベース「かき/渋抜きがき/生」
- 文部科学省 食品成分データベース「かき/干しがき」
- 農林水産省「近畿における令和6年産かき収穫量等の概要」:日本の収穫量と主な産地。
- ベトナム知的財産庁「BẢO HỘ CHỈ DẪN ĐỊA LÝ BẢO LÂM」:2012年11月14日のGI登録。
- VnExpress「Đặc sản hồng không hạt Bảo Lâm」:水に浸けて渋を抜く方法。
- Vietnamnet「Chuyện thú vị quanh những cây hồng tiến vua sắp tuyệt chủng ở Phú Thọ」:ハックチの柿と渋抜きの日数。
- Công Thương紙「Thúc đẩy phát triển thương hiệu hồng treo gió Đà Lạt」:ダラットの干し柿とJICAの技術指導。