MENU

ベトナムのモモ図鑑|種類・旬・産地・栄養の違い

ベトナムのモモ図鑑の表紙。花と実のついたモモの枝の植物画と、副題「白桃・黄桃・ネクタリンの違いと、ベトナム独自の品種・文化を探る」
ベトナムのモモ図鑑。白桃・黄桃・ネクタリンの違いと、ベトナムの品種・文化。

モモは、春に花を咲かせるバラ科の落葉樹です。 原産は中国で、少なくとも約7,500年前には長江下流域で栽培化が始まっていたとする研究があります。皮に毛のないネクタリンも、実はモモと同じ種類の植物です。

この図鑑では、モモの生態、白桃・黄桃・ネクタリンの違い、「とろける果肉」と「とろけない果肉」、100gあたりの栄養を紹介します。ベトナム語では「quả đào」。ベトナム北部では、モモはテト(旧正月)に飾る花として親しまれています。果物としても、ラオカイ省バクハーやランソン省マウソンの高地で、5〜7月に国産のモモが採れます。

硬いモモの食べ頃や保存方法、ハノイでの購入・実食記録はベトナムのモモの食べ方|追熟・保存とハノイ実食記録で紹介しています。

目次を開く

モモとは?原産地・学名・ベトナム語名

モモの分類(バラ科サクラ属、学名Prunus persica、落葉樹)と、約7,500年前の中国・長江下流域、弥生時代の日本、明治以降の白桃の発見までを示した年表
モモの正体と起源。原産は中国。日本では明治以降に水蜜桃の導入や品種改良が進みました。明治以前にも食用にされていました。
項目 内容
日本語名 モモ、桃
英語名 Peach(毛のないものはNectarine)
ベトナム語名 quả đào(クアー ダオ)。花はhoa đào(ホア ダオ)
分類 バラ科サクラ属
学名 Prunus persica(ネクタリンも同じ種)
原産地 中国。少なくとも約7,500年前に長江下流域で栽培化が始まったとする研究がある
植物の姿 春に花を咲かせ、冬に葉を落とす落葉樹
花の特徴 多くの品種は自家結実性。ただし受粉用の花粉が必要な品種もある
味の違い 日本の白肉種にはやわらかく果汁の多い品種がある。バクハーやマウソンにはシャキッとした歯ごたえのモモがある
注目したい成分 水分、カリウム、黄肉種やネクタリンのβ-カロテン
ベトナムの主な産地例 ラオカイ省バクハー地域、ランソン省マウソン地域

学名・生態はClemson大学「Peaches & Nectarines」など、成分は後掲の文部科学省資料に基づきます。

モモはどんな植物?|木・花・果実の特徴

モモの果肉、硬い内果皮である核、その内側の種子の断面図
核は硬くなった内果皮で、内側に種子があります。多くの品種は自家結実性ですが、白桃などは別品種の花粉が必要です。

春に花を咲かせる落葉樹、実は「核果」

モモは、春に花を咲かせ、夏に実をつける落葉樹です。冬は葉を落として休眠します。実の中心には、硬くなった内果皮の「核」があり、その内側に種子があります。このような果実を「核果(かくか)」といい、同じサクラ属のサクランボやスモモ、ウメも仲間です。

多くの品種は1本でも実がなる

モモの多くの品種は、自分の花粉で実をつける「自家結実性」をもちます。ただし、すべての品種に当てはまるわけではありません。岡山県の歴史資料でも「白桃」は受粉が必要な品種として紹介されています。苗木を育てる場合は、品種ごとの花粉の有無と受粉条件を確認しましょう。出典:岡山県「桃・ぶどう150年の歴史」(2026年9月29日確認)。

原産は中国|遺跡の核からたどる栽培の歴史

原産地の手がかりは、遺跡から出たモモの核です。2014年の研究では、中国・浙江省の遺跡から出土した核を調べ、少なくとも約7,500年前には長江下流域でモモの栽培化が始まっていたと考えられると報告しています。時代が新しくなるほど核が大きくなり、約5,300〜4,300年前の良渚(りょうしょ)文化の核は、今の栽培品種に近い形になっていました。出典:Zheng, Crawford, Chen「Archaeological Evidence for Peach (Prunus persica) Cultivation and Domestication in China」PLOS ONE(2014年)(2026年9月29日確認)。

日本でも、弥生時代の遺跡からモモの核(硬い内果皮)が見つかっており、古事記や日本書紀にも登場します。ただし、果物として広く食べられるようになったのは明治時代以降です。出典:農林水産省 aff 2019年5・6月号(2026年9月29日確認)。

モモの種類と味|白桃・黄桃・ネクタリンの違い

白肉種・黄肉種・ネクタリンを、分類の基準(果肉の色/皮の毛の有無)と特徴で比べた表
白肉種・黄肉種は果肉の色、ネクタリンは皮の毛の有無による分け方で、ネクタリンにも白・黄の両方があります。

モモの種類を知る入り口は、「果肉の色」と「皮の毛」です。白肉種・黄肉種は果肉の色、ネクタリンは皮の毛の有無による呼び分けなので、分類の基準が異なります。ネクタリンにも白肉種と黄肉種があります。

種類 品種の例 特徴
白肉種(白桃系) 白桃、白鳳、あかつき、川中島白桃 果肉が白〜クリーム色。日本で食べられているモモの中心
黄肉種(黄桃) 黄金桃など 果肉が黄色。β-カロテンが多い
ネクタリン 各種 皮に毛がない。白肉種と黄肉種がある

品種の例は日本の一般的な例です。ベトナムの店頭に並ぶ品種とは限りません。

白肉種と黄肉種

日本で食べられているモモの多くは、果肉の白い「白肉種」です。その代表の「白桃」は、1899年に岡山県の大久保重五郎が、中国から導入された上海水蜜桃の実生(種から育てた木)の中から見つけた品種です。出典:岡山市「大久保重五郎翁顕彰碑」(2026年9月29日確認)。農林水産省は、白桃を「日本のももの元祖」とされる品種と紹介しています。その後、白鳳、あかつき、川中島白桃などの品種が生まれました。出典:農林水産省 aff 2019年5・6月号(2026年9月29日確認)。

一方、果肉が黄色い「黄肉種」は、黄桃とも呼ばれます。日本では黄金桃などの品種があります。

ネクタリンは「毛のないモモ」

ネクタリンは、モモとは別の果物のように見えますが、同じ種(Prunus persica)で、皮に毛がないモモです。フロリダ大学の資料でも、両者は同じ種で、ネクタリンには皮の毛がないと説明されています。出典:UF/IFAS(2026年9月29日確認)。

とろける果肉と、とろけない果肉

とろける果肉(溶質)と、とろけない果肉(不溶質・硬肉)の硬さの変化をグラフで比べた図
果肉がやわらかくなる傾向を示す模式図で、実測値ではありません。不溶質と硬肉は同じ分類ではなく、硬さの変化には品種差があります。

モモの果肉には、熟すととろけるようにやわらかくなるタイプ(溶質)や、比較的硬さが残るタイプ(不溶質)などがあります。軟化しにくい「硬肉」のタイプもあり、硬さだけで分類は決められません。

フロリダ大学の資料によると、とろけるタイプは完熟すると急にやわらかくなり、輸送に弱いという弱点があります。一方、とろけないタイプは、木の上で完熟させても硬さを保てます。出典:UF/IFAS「Florida Peach and Nectarine Varieties」(2026年9月29日確認)。

食感は品種だけでなく、収穫時の熟度や保存状態にも左右されます。ベトナムで「シャキッとしている」と紹介されるモモを、食感だけで不溶質と決めることはできません。

モモの栄養とカロリー|3種類を100gで比較

白肉種・黄肉種・ネクタリンのエネルギー、水分、β-カロテン当量の比較
可食部100gあたりの比較。5・210・240μgはβ-カロテン当量で、β-カロテンそのものの値とは異なります。数値は本文の表でも確認できます。

文部科学省の食品成分データベースでは、モモの白肉種・黄肉種と、ネクタリンを分けて掲載しています。皮や種などを除いた、食べる部分100gあたりで比較します。

成分(可食部100gあたり) もも・白肉種・生 もも・黄肉種・生 ネクタリン・生
エネルギー 38kcal 48kcal 39kcal
水分 88.7g 85.4g 87.8g
炭水化物 10.2g 13.4g 10.7g
食物繊維 1.3g 1.9g 1.7g
カリウム 180mg 210mg 210mg
ビタミンC 8mg 6mg 10mg
β-カロテン当量 5μg 210μg 240μg

出典:文部科学省「もも・白肉種・生」、同「もも・黄肉種・生」、同「ネクタリン・生」。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、2026年10月16日確認。

白肉種のモモは、100gのうち88.7gが水分で、エネルギーは38kcalです。この表で差が大きい成分の一つがβ-カロテン当量で、白肉種の5μgに対し、黄肉種は210μg、ネクタリンは240μgと、40倍以上の差があります。β-カロテン当量は、β-カロテンなど複数の成分を換算した値で、β-カロテンそのものの量とは異なります。

ビタミンCは可食部100gあたり6〜10mgです。栄養は一つの成分だけで評価せず、食事全体の中で楽しみましょう。

数値は1個あたりではなく、可食部100gあたりです。日本の食品成分表の値は、ベトナムで売られている個々の商品と一致するとは限りません。

モモの栽培条件|寒さの必要量は品種しだい

低温要求量の説明と、温帯向けの品種と低温要求量の少ない品種(100〜450単位)の違い、灰星病への注意を示した図
栽培条件と低温要求量。フロリダ大学の資料にある品種の低温要求量は100〜450単位です。寒さの条件だけで栽培の成否が決まるわけではありません。

冬の寒さが少なくても育つ品種

冬に葉を落とす果樹は、冬に一定の寒さに当たらないと、春にうまく芽が動きません。この必要な寒さの量を「低温要求量」といいます。Clemson大学の資料では、約7℃(45°F)以下の時間を数え、寒さが足りないと、花や葉が出るのが遅れる、実が少なくなる、小さく形の悪い実が増える、といった症状が出ると説明しています。出典:Clemson University HGIC(2026年9月29日確認)。

モモの特徴は、品種によって必要な寒さの量が大きく違うことです。

暖かいフロリダ州で品種づくりをしているフロリダ大学では、0〜7℃の1時間を1単位として、100〜450単位で育つ低温要求量の少ない品種を開発しています。温帯で生まれた多くの品種は、これより多くの寒さを必要とします。出典:UF/IFAS「Florida Peach and Nectarine Varieties」(2026年9月29日確認)。

ベトナムでも、国産のモモの産地は冬に冷え込む北部の高地です。ただし、栽培地の条件と販売地は別です。南部の店でも、北部産や輸入品が販売されることがあります。

果実を腐らせる病気「灰星病」

モモには、果実を腐らせる「灰星病(はいぼしびょう、brown rot)」などの病気があります。出典:University of Georgia「Diseases」(2026年9月29日確認)。

モモの旬と流通時期|日本とベトナム

バクハーは5月初め、マウソンは6〜7月、日本は6月ごろから夏が旬の目安
各出典で紹介された旬の目安。品種や天候によって変わり、輸入品の販売時期とは区別します。

日本のモモは夏の果物です。農林水産省の統計では、令和7年産のモモの収穫量は10万600トンでした。収穫量の多い県は山梨県(32%)、福島県(23%)、長野県(10%)、山形県(8%)、和歌山県(7%)の順で、この5県で全国の約8割を占めています。出典:農林水産省「令和7年産もも、すももの結果樹面積、収穫量及び出荷量」(2026年10月16日確認)。

ベトナム北部の産地では、日本と同じか、やや早い時期に旬を迎えます。

産地 時期の目安 出典
バクハー地域(ラオカイ省)のフランス系交配種 5月初めに最盛期 Tuổi Trẻ紙(2015年)
マウソン地域(ランソン省) 6〜7月 Sản phẩm vùng miền(2023年)
日本(参考) 6月ごろから夏にかけて 農林水産省

年によって天候で時期は前後します。また、輸入のモモやネクタリンも売られているため、店頭で見かける時期はここに挙げた時期に限りません。購入するときは、値札や包装の産地表示で確かめるのが確実です。

ベトナムのモモ|テトの花と北部高地の果実

テトに飾る桃の花(hoa đào)と、初夏の果実(quả đào)を左右に並べた図
ベトナム北部では、モモはテトの花(hoa đào)としても、初夏の果物(quả đào)としても親しまれています。

ベトナム語名はquả đào

ベトナム語でモモは「quả đào(クアー ダオ)」、モモの花は「hoa đào(ホア ダオ)」です。

北部では「テトの花」としておなじみ

ベトナム北部では、モモは果物としてだけでなく、テト(旧正月)に飾る花として身近な存在です。ハノイのニャッタン(Nhật Tân)は、テトの桃の花の産地として知られています。VietnamPlusは、ニャッタンの桃の花には花びらが最大24枚になるものがあり、鉢で仕立てた「đào thế」などが売られていると紹介しています。出典:VietnamPlus(2020年1月25日掲載、2026年9月29日確認)。

テトの前にハノイの街で飾られる花の一つが、この桃の花です。由来譚はモモの歴史と物語|桃太郎・白桃の誕生とベトナムのテトで紹介しています。一方、南部ではテトの花として黄色い花「mai(マイ)」が好まれます。

バクハーのフランス系交配種

バクハーの桃畑のイメージとフランス系交配種の紹介
ベトナム北部ラオカイ省バクハー地域の産地イメージ。Tuổi Trẻ(2015年)の紹介に基づき、実景や地図ではありません。

果物としてのモモの産地には、中国との国境に近いラオカイ省のバクハー地域があります。Tuổi Trẻ紙によると、バクハーでは1990年代初めに、国連食糧農業機関(FAO)の開発事業を通じて「đào lai Pháp(フランス系の交配種)」が導入されました。記事掲載時点で、郡内のタチャイ、ナホイ、バンフォーなどの村で70〜80haが栽培されていました。5月初めに最盛期を迎え、やわらかいというよりシャキッとした歯ごたえで、甘さの中にほどよい酸味があると紹介されています。出典:Tuổi Trẻ紙(2015年5月11日掲載、2026年9月29日確認)。面積は掲載当時の数値です。

マウソンの在来のモモ

マウソンの桃畑のイメージと6〜7月の旬、果皮の色
ベトナム北部ランソン省マウソン地域の産地イメージ。実景や地図ではありません。色だけで食べ頃を判断せず品種も確認します。

中国との国境に近いランソン省のマウソン地域は、1年を通して涼しく、霧に包まれることの多い高原です。ここで育つ「đào Mẫu Sơn(マウソンのモモ)」は、地域の特産として知られています。Sản phẩm vùng miềnによると、皮は緑がかった白色で、熟すと桃色〜赤色になります。表面は細かい毛に覆われ、果肉はシャキッとして甘く、さわやかな香りがあります。6〜7月に熟し、記事掲載時点で約2.5ha・2,000本余りが栽培されていました。出典:Sản phẩm vùng miền(2023年4月4日掲載、2026年9月29日確認)。面積・本数は掲載当時の数値です。

輸入のモモ・ネクタリン

ベトナムの店頭に並ぶモモを国産(北部高地産)と輸入(米国カリフォルニア州産など)に分け、産地は値札や包装の表示で確認することを示した図
図中の輸入承認は2024年当時の情報です。北部産全体の食感や流通割合を表す図ではありません。店頭のモモの見分け方。見た目や食感だけで産地は判断できません。値札や包装の産地表示を確認しましょう。

ベトナムの店頭には、輸入のモモやネクタリンも並びます。2024年7月には、ベトナム農業農村開発省(当時)が、5年以上の交渉を経て米国産のモモとネクタリンの輸入を認めました。同記事では、承認対象はカリフォルニア州産と説明されています。これは2024年当時の承認についての記述です。出典:Fresh Fruit Portal(2024年8月15日掲載、2026年9月29日確認)。

モモを知るときは、「どの種類・品種か」「どこで育ったか(産地)」「どこの国から来たか(原産国・輸出国)」を分けて見るのがポイントです。見た目や食感だけで産地を判断することはできません。産地は包装や値札の表示で確かめ、分からないときは販売店に尋ねましょう。

なお、この記事で紹介した産地は代表的な例です。ベトナム全体の生産量や、店頭に並ぶモモの内訳を示すものではありません。

まとめ|モモを知る5つのポイント

モモの栽培化、ネクタリン、食感と受粉、寒さ、ベトナムの花と果実の5項目
図鑑の要点。栽培条件や食感は品種で異なります。
  1. モモはバラ科サクラ属の落葉樹。原産は中国で、少なくとも約7,500年前には長江下流域で栽培化が始まっていたと考えられています。
  2. ネクタリンは、モモと同じ種で皮に毛のないもの。果肉の色による白肉種・黄肉種の分類とは別で、ネクタリンにも両方があります。
  3. モモの多くの品種は自家結実性ですが、受粉用の花粉が必要な品種もあります。果肉には、とろけるタイプと、熟しても歯ごたえが残るタイプがあります。
  4. 必要な冬の寒さは品種によって大きく違い、100単位前後で育つ低温要求量の少ない品種もあります。
  5. ベトナム北部では、モモはテトの花としておなじみ。果物としては、バクハーやマウソンの高地で5〜7月に国産のモモが採れます。

初夏にベトナムの市場で「quả đào」を見かけたら、国産か輸入品か、やわらかいタイプかシャキッとしたタイプかに注目してみてください。

モモ三部作の関連記事

参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ベトナム・ハノイ在住。現地の市場やスーパーで実際に果物を購入し、味・旬・選び方・食べ方を紹介しています。日本ではあまり知られていない南国フルーツの魅力を、現地での体験をもとに分かりやすくお伝えします。