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ナシ図鑑|日本なし・洋なしの違い、栄養とベトナムの旬・産地

ナシの白い花と葉を描いたナシ図鑑の表紙
ナシ図鑑。日本・西洋の系統から、ベトナム・バクハーの品種までをたどります。

ベトナムのナシ(梨)は「quả lê」と呼ばれ、北部のバクハー地域でも栽培されています。 収穫期は品種によって異なり、VH6は6月下旬〜7月中旬、在来の青ナシは8月下旬〜9月上旬の例が報告されています。

この図鑑では、ベトナムで見かけるナシを知りたい方に向けて、日本なし・中国なし・洋なしの違い、味と栄養、産地と旬を紹介します。収穫期の出典と対象年は、後半の「ナシの旬と流通時期」で確認できます。

目次

ナシとは?原産地・学名・ベトナム語名

項目 内容
日本語名 ナシ、梨
英語名 Pear(日本なしはAsian pear、Nashiとも)
ベトナム語名 quả lê(クアー レー)
分類 バラ科ナシ属
学名 日本なし Pyrus pyrifolia、中国なし Pyrus bretschneideri、西洋なし Pyrus communis
原産地 日本なしは東アジアに由来。日本だけを原産地とするものではない
植物の姿 春に白い花を咲かせ、冬に葉を落とす落葉樹
花の特徴 自分の花粉では実がなりにくい品種が多い(自家不和合性)
味の違い 日本なしはシャキッとして果汁が多い。西洋なしは追熟させてなめらかに
成分と食感の特徴 水分、カリウム、ソルビトール。石細胞は果肉のざらつきに関わる組織
ベトナムの主な産地例 ラオカイ省バクハー地域(品種VH6、在来の青ナシ)

学名は後掲の文部科学省食品成分データベースの表記、生態はClemson大学「Asian Pear」、由来は川崎市「ナシの話」を参考にしています(2026年9月29日確認)。分類の扱いは資料により異なります。

ナシの分類、名称、原産地、生態をまとめた基本情報
ナシの基本情報。英語では「apple pear」と呼ばれることもありますが、リンゴとナシの交配種ではありません。

ナシはどんな植物?|木・花・果実の特徴

春に白い花を咲かせる落葉樹

ナシは、春に白い花を咲かせ、夏から秋に実をつける落葉樹です。冬には葉を落として休眠します。英語では日本なしや中国なしをまとめて「Asian pear」と呼びます。形が丸く、リンゴのような歯ざわりから「apple pear」と呼ばれることもありますが、リンゴとナシをかけ合わせた果物ではありません。出典:Clemson University HGIC(2026年9月29日確認)。

自分の花粉では実がなりにくい「自家不和合性」

ナシの花には、1つの花に雄しべと雌しべがそろっています。それでも、自分の花粉では実がなりにくい品種が多いという特徴があります。

これを「自家不和合性(じかふわごうせい)」といいます。農研機構の説明では、花粉と雌しべが「自分」と「他者」を見分け、自分の花粉では受精しない性質です。日本なしの主要な品種はこの性質をもつため、産地では別の品種の花粉を人の手で花につける「人工受粉」が行われています。花が咲いている短い期間に行う必要があり、手間のかかる作業です。出典:農研機構(2015年12月16日公表、2026年9月29日確認)。

別の品種ならどれでも受粉できるわけではありません。花粉の適合性に加え、開花期が重なることも大切です。出典:Clemson大学「Asian Pear」(2026年10月3日確認)。

前掲の農研機構の資料では、自分の花粉でも実がなる新しい品種「なるみ」も紹介されています。人工受粉の手間を減らす品種づくりが進んでいるのです。

ナシの受粉には相性がある
ナシの受粉には相性がある。

日本なしの由来|東アジアと日本の栽培史

川崎市の解説では、栽培されている日本なしは、日本の中部以南、朝鮮半島南部、中国の長江沿岸に由来するニホンヤマナシを起源としています。同市は登呂遺跡の炭化種子や『日本書紀』の記述にも触れており、日本では古くから親しまれてきた果物です。出典:川崎市「ナシの話」(2026年9月29日確認)。

代表品種の二十世紀は、千葉県松戸市で発見され、鳥取県で栽培が広まった青梨です。発見者や名前の由来は、ナシの歴史と物語で紹介します。

ナシの種類と味|日本なし・中国なし・洋なしの違い

ナシは大きく日本なし・中国なし・西洋なしに分けられます。西洋なしは「洋なし」とも呼ばれます。

系統 品種の例 食べ方の目安
日本なし 幸水、豊水、新高、二十世紀 木の上で熟してから収穫。買ったらそのまま、シャキッとした食感を楽しむ
中国なし 鴨梨(ヤーリー)など 日本なしと同じくシャキッとした食感。形は品種によって丸型〜洋なし型
西洋なし ラ・フランス、バートレットなど 収穫後に追熟させ、やわらかくなってから食べる

品種の例は一般的な例で、ベトナムの店頭に並ぶ品種とは限りません。鴨梨など東アジアの品種は台湾農業部の解説でも紹介されています(2003年1月、2026年9月29日確認)。

日本なし・中国なし・西洋なし
日本なし・中国なし・西洋なし。

日本なし|赤梨と青梨

日本なしは、皮の色で「赤梨」と「青梨」に分けられます。幸水や豊水のように皮が茶色っぽいものが赤梨、二十世紀のように黄緑色のものが青梨です。二十世紀は、果汁が多く、甘みとさわやかな酸味があるとされる青梨の代表品種です。出典:くだものナビ「二十世紀」(2026年9月29日確認)。

西洋なし|収穫後に追熟させる

Clemson大学の資料は、日本なしなどのAsian pearは木の上で熟させると最もおいしくなる点で、西洋なしと違うと説明しています。果肉はシャキッとして果汁が多く、芯の近くにはやや酸味があります。やわらかく甘い西洋なしとは、はっきり違う食感です。出典:Clemson University HGIC(2026年9月29日確認)。

西洋なしは、かたいうちに収穫し、置いておくことで果肉がなめらかになります。キウイと同じ「追熟させて食べる果物」の仲間と考えると分かりやすいでしょう。

木の上で熟す日本なしと収穫後に追熟する西洋なしの違い
「木の上で熟す」日本なしと「収穫後に追熟する」西洋なし。

シャリシャリした食感に関わる「石細胞」

ナシの果肉のざらつきや独特の食感には、「石細胞(せきさいぼう)」が関わっています。細胞壁が厚くなり、リグニンなどが蓄積した細胞で、果肉中では集まって存在します。園芸学会雑誌の研究では、品種「新高」の果肉で、花が満開になってから60日ごろにかけて石細胞が発達する様子が調べられています。出典:園芸学会雑誌76巻3号(2007年)(2026年9月29日確認)。

果肉のざらつきに関わる石細胞
果肉のざらつきに関わる石細胞。

ナシの栄養とカロリー|3種類を100gで比較

文部科学省の食品成分データベースでは、日本なし、中国なし、西洋なしを分けて掲載しています。皮や芯などを除いた、食べる部分100gあたりで比較します。

成分(可食部100gあたり) 日本なし・生 中国なし・生 西洋なし・生
エネルギー 38kcal 49kcal 48kcal
水分 88.0g 86.8g 84.9g
炭水化物 11.3g 12.7g 14.4g
食物繊維 0.9g 1.4g 1.9g
カリウム 140mg 140mg 140mg
ビタミンC 3mg 6mg 3mg

出典:文部科学省「日本なし・生」、同「中国なし・生」、同「西洋なし・生」。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、2026年9月29日確認。

日本なしの可食部100gには、水分が88.0g含まれます。この表ではエネルギーが38kcalと3種類の中で最も低く、西洋なしは食物繊維が1.9gと最も多くなっています。種類による特徴を知る目安として見てください。

日本なしには、糖アルコールの一種であるソルビトールが可食部100gあたり1.5g含まれます。出典:文部科学省「日本なし・生/炭水化物」(2026年9月29日確認)。

数値は1個あたりではなく、可食部100gあたりです。日本の食品成分表の値は、ベトナムで売られている個々の商品と一致するとは限りません。

ナシの栄養を100gで比較
ナシの栄養を100gで比較。生の可食部100gあたり。数値と出典は本文の表でも確認できます。

ナシの栽培条件|冬の寒さと品種の違い

低温要求量は資料により幅がある

冬に葉を落とす果樹は、冬に一定の寒さに当たらないと、春にうまく芽が動きません。この必要な寒さの量を「低温要求量」といいます。

必要な寒さは品種や計算方法によって異なるため、ほかの果樹との単純な大小比較には向きません。

Clemson大学の資料では、Asian pearの低温要求量は600〜900時間とされ、品種によってはそれより少なくても育つと説明されています。出典:Clemson University HGIC(2026年9月29日確認)。この数値は米国サウスカロライナ州向けの栽培資料による目安で、ベトナムのすべての品種にそのまま適用できるものではありません。

ベトナムでは、北部の山地でナシの栽培例が報告されています。冬の寒さは栽培を考えるうえで重要ですが、特定の資料だけで栽培できる地域を断定することはできません。

米国の栽培資料が挙げる「火傷病」

米国サウスカロライナ州向けの同資料は、栽培上の大きな問題として、細菌が原因の「火傷病(かしょうびょう、fire blight)」を挙げています。花や枝が焼けたように枯れる病気で、病気に強い品種を選ぶことや、園地を清潔に保つことが対策とされています。出典:Clemson University HGIC(2026年9月29日確認)。

ナシの栽培と冬の寒さ
ナシの栽培と冬の寒さ。

ナシの旬と流通時期|日本とベトナム

日本なしは夏から秋の果物です。農林水産省の統計では、令和7年産の日本なしの収穫量は16万7,900トン(概数)で、収穫量の多い県は千葉県、茨城県、栃木県、福島県、鳥取県の順でした。出典:農林水産省「令和7年産日本なし、ぶどうの栽培面積、結果樹面積、収穫量及び出荷量」(2026年2月17日公表、2026年9月29日確認)。

ベトナムでも、品種によって収穫期が違います。VH6と在来の青ナシを分けて見てみましょう。

産地・品種 時期の目安 出典
バクハー地域のVH6 6月下旬〜7月中旬(2025年) Công Thương紙(2025年)
バクハーの在来の青ナシ 8月下旬〜9月上旬(2024年は乾燥で早まった) Báo Lào Cai(2024年)
日本の二十世紀(参考) 8〜10月ごろ、9月が最盛期 くだものナビ

年によって天候で時期は前後します。また、韓国産などの輸入ナシも売られているため、店頭で見かける時期はここに挙げた時期に限りません。購入するときは、値札や包装の産地表示で確かめるのが確実です。

ナシの収穫時期の目安
ナシの収穫時期の目安。

ベトナムのナシ|バクハーのVH6と青ナシ

ベトナム語名はquả lê

ベトナム語でナシは「quả lê(クアー レー)」です。スーパーでは「lê Hàn Quốc(韓国のナシ)」のように、後ろに国名がついた表示もよく見られます。

ベトナム北部のナシ産地・バクハー
ベトナム北部のナシ産地・バクハー。地域の包含関係を示す模式図で、地形や距離を示す地図ではありません。

台湾から来た品種「VH6」

ベトナム北部、中国との国境に近いラオカイ省のバクハー地域は、ナシの産地として知られています。栽培されている品種のひとつが、台湾由来の「VH6」です。

ベトナム国家農業普及センターによると、VH6は2002年からバクハーの研究・生産農場で試験栽培が始まり、2012年に農業農村開発省から新しい品種として認められました。同資料はナムプンでの栽培例を紹介し、樹齢5〜7年で1本あたり30〜50kgの収穫例を挙げています。出典:ベトナム国家農業普及センター(2021年6月8日掲載、2026年9月29日確認)。

2025年7月のCông Thương紙によると、バクハー地域の3つの社(基礎自治体)で、VH6と青ナシを合わせて約900haが栽培され、そのうち500ha以上で収穫が行われていました。収穫は6月下旬に始まり、7月中旬に終わる見込みでした。7月4日時点の産地の価格は、上級品が1kgあたり3万〜4万ドン、並品は5千〜1万ドンで、前年の半分ほどに下がっていたと伝えています。出典:Công Thương紙(2025年7月4日掲載、2026年9月29日確認)。価格は記事掲載時の産地価格の目安で、店頭の価格とは異なります。

ここで示したのはバクハー周辺の栽培例です。VH6がベトナム全体の生産量に占める割合は、この資料からは分かりません。

在来の青ナシ(lê xanh)

バクハーには、昔から育てられてきた在来の青ナシ(lê xanh:レー サイン)もあります。Báo Lào Caiによると、楕円形で、熟すと緑の皮にほんのり赤みがさします。1個300〜500gで、白い果肉は果汁が多く、甘くてさわやかな香りがあると紹介されています。収穫は例年8月下旬〜9月上旬ですが、2024年は乾燥が続いたため早まりました。同記事の2024年時点では、栽培面積はかつての100ha近くから15ha余りに減っており、地元では保全と観光への活用が進められています。出典:Báo Lào Cai(2024年8月19日掲載、2026年9月29日確認)。

バクハーのVH6と在来の青ナシ
バクハーのVH6と在来の青ナシ。約900haはVH6と青ナシの合計。3社は基礎自治体を指し、2025年の報道に基づきます。

品種・生産地・輸出元の国を分けて見る

ナシを知るときは、「どの系統・品種か」「どこで育ったか(産地)」「どこの国からベトナムへ輸出されたか(輸出元)」を分けて見るのがポイントです。生産国と輸出元の国が同じとは限りません。

たとえば、見た目が丸いナシでも、日本なしとは限らず、中国なしや台湾由来の品種のこともあります。形や色だけで品種や産地を判断することはできません。産地は包装や値札の表示で確かめ、分からないときは販売店に尋ねましょう。 ハノイで購入した中国産の青ナシの写真・価格・味は、ナシの食べ方の実食記録にまとめています。

なお、この記事で紹介した産地は代表的な例です。ベトナム全体の生産量や、店頭に並ぶナシの内訳を示すものではありません。

まとめ|ナシを知る5つのポイント

  1. ナシはバラ科ナシ属の落葉樹。日本なし・中国なし・西洋なしの3つの系統があります。
  2. 日本なしの主要品種は、自分の花粉では実がなりにくい「自家不和合性」をもち、産地では人工受粉が行われています。
  3. 日本なしは木の上で熟してから収穫し、西洋なしは収穫後に追熟させます。日本なしのざらつきや独特の食感には「石細胞」が関わっています。
  4. 冬に必要な寒さは品種によって異なり、ベトナムでは北部の山あいに栽培例があります。
  5. バクハーでは台湾由来のVH6と在来の青ナシが栽培されています。収穫期は異なり、VH6は初夏〜夏、青ナシは晩夏〜初秋の例が報告されています。

ベトナムの市場で「quả lê」を見かけたら、国産か輸入品か、どの国から来たものかに注目してみてください。

売り場で確認する3つの視点
売り場で確認する3つの視点。

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参考資料

以下の資料の初回確認日は2026年9月29日です。再確認した資料と確認日は、各版の校正記録に記載しています。統計・価格・収穫時期は本文に示した調査年や掲載時点の情報です。

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この記事を書いた人

ベトナム・ハノイ在住。現地の市場やスーパーで実際に果物を購入し、味・旬・選び方・食べ方を紹介しています。日本ではあまり知られていない南国フルーツの魅力を、現地での体験をもとに分かりやすくお伝えします。